2020年に開催される東京五輪・パラリンピックまでに歩道の電柱が姿を消すかもしれません。
政府が電線の地中化を促進する方向で法改正をしたり、工事費用負担軽減のための補助金制度を今年の春あたりまでに計画するそうです。
名付けて「無電柱化推進計画」。
狭い歩道でも電柱をよけて車道に出なくてもすむようになるのか、電柱に付けられている信号や街灯はどうなるのか、電線はどこを通るのか、無電柱化のメリット・デメリットなどをまとめました。
ジャマな歩道の電柱
広い歩道ならまだしも、狭い歩道の真ん中や路側帯などに電柱があると向こうから来る歩行者とすれ違うこともできません。
歩行者よりも切実なのが車いすで生活している方たちでしょう。
以前、狭い歩道でおばあちゃんの車いすを押していて電柱を避けるために車道に降りたことがありました。
歩道も車道も狭い道で、交通量も多いのでかなり危険だと感じたものです。
しかし、病院への道だったりすると違う道を選べません。
このような邪魔で危険な電柱が無くなるのならよい制度なのではないでしょうか。
バリアフリー都市化を目指す
今まで無電柱化が進められてきたのは幹線道路などの広い道路でした。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックが決まったことで、政府は国内全域の「バリアフリー都市」化を目指すのだといっています。
車いすやベビーカーでの通行などに支障をきたす電柱を撤去しようということなのだそうです。
詳しいことは今年の春までに決まるので現在はまだ正確にはわかりませんが、バリアフリー化が目的ということですから、無電柱化であっても電線の地中化であるとは限らないでしょう。
欧米には少ない電柱
パリやロンドンではすべての電線が地中化しているそうですし、ニューヨークでも半分以上は地中化されているのだそうです。
そういえば、海外の映画などでは都会の風景に電柱や電線はありませんよね。
そして、日本の風景といえばゴチャっとした街並みに電線が張り巡らされているもの。
2020年には東京の街並みが変わるのでしょうか。
無電柱化と地中化
無電柱化とは電柱を無くすことです。
電柱さえ無ければ電線がどこを通ろうと無電柱化となります。
電線の地中化とは、電線を地中に掘った空洞などに埋め込むことです。
電線を地下に埋めることによって電柱を無くすことが可能です。
無電柱化のメリット
無電柱化されるとどんなメリットがあるのかをみていきましょう。
無電柱化であり、なおかつ電線が地中化されるという状況を設定しています。
景観改善
景色に電柱や電線が入り込まないので、スッキリした景観になります。
きれいな風景を撮るときに「あの電線ジャマだわー」ということがなくなります。
伝統的な町並み復活
木造の町並みや蔵造りの町並みなど歴史的な景観を復活させることができます。
それにより、観光地として経済の活性化を促すことができます。
地価上昇
電線類を地中に埋めて電柱が街中からなくなると地価が上がるという研究結果があるそうです。
電線がないと広々とした感じを出せるので、高級住宅地として販売することができるのでしょう。
防災性向上
電柱はコンクリートや鋼板などでできていますが、地震や台風のような災害にあうと倒れてしまうこともあります。
切れた電線が垂れ下がって感電の危険も起きてしまいます。
電柱と電線がなくなれば、そのような危険な状態は回避できます。
ネットワーク信頼性向上
電線類が地中にあると災害に強いのですが、つまりそれは停電などに強いということでもあります。
電柱から電柱へと張ってある電線より地中に埋まっている電線のほうが災害時の被害を受けにくく、停電しにくいということです。
バリアフリー
このバリアフリーが政府の考えている最大のメリットでしょう。
車いすやベビーカーなどが通りやすい歩道をつくり、バリアフリー都市だと宣言したいのではないでしょうか。
だとすれば、広い歩道での無電柱化だけでなく、日本ならではの狭い路地までも電線の地中化をするべきなのかもしれません。
死亡率減少
車を運転中に電柱に激突するなんてそうそうないと思うかもしれません。
しかし、実際には起こっています。
そして電柱に衝突すると死亡率が10倍もあがるのだそうです。
安全運転は大事ですが、回避できない事故だってあり得ますし、そんなときに電柱が目の前にないとは限りませんよね。
電柱がなくなることで死亡率が下がるのであれば、ぜひ無電柱化してほしいものです。
無電柱化のデメリット
無電柱化するとデメリットはあるのでしょうか。
現在、東京23区内で無電柱化されているのはわずかに8%のみにとどまりますが、日本全国で電柱は1年間に7万本というペースで増加しているといわれています。
必要だから増加している電柱ですが、それをなくしてしまって大丈夫なのでしょうか。
無電柱化のデメリットを考えてみたいと思います。
コスト
電柱撤去に費用が掛かります。
また、電線を地中化するためには共同溝という電線を通すための空洞を地下に掘る必要があり、それにも費用が掛かります。
共同溝は小さな穴から人が歩けるような大きな空洞までさまざまあるそうですが、大きければ地下鉄並みのコストがかかるのだといわれています。
信号と街灯
信号や街灯が取り付けられていることが多い電柱ですが、電柱を撤去してしまえばそれに代わる新たな柱を設置しなければなりません。
細い柱でもかまわないらしく、電柱のない道路の歩道には街灯だけが付いていたり、信号のみの柱が見受けられます。
電柱よりも細いためなのか、圧迫感は少なく感じますよね。
地下が空洞
電線類を全て地下に埋めるためには共同溝が必要になります。
共同溝は地下に掘った電線を通すための空洞のことですが、大きなものだと人が通ることが可能なほどだといいます。
大きな空洞ではなく直接地中に電線を埋める場合もあるようですが、それでも空洞が日本中の幹線道路の下に作ると、地震が起きた場合に地表が弱くなるということはないのでしょうか。
さすがにこのあたりのことは考慮したうえでの計画でしょうけれど、不安がなくなるわけではありません。
デメリットではなく利用することも可能
地下が空洞になることはデメリットだけではないかもしれません。
人が通れるほど大きな共同溝がある幕張新都心では共同溝で野菜を作る試みが始まっています。
太陽光に代わる照明と液体の養分によって、天候に左右されずに野菜をつくることが可能なのだとか。
使用することのなかった空間を利用するという試みはすばらしいですよね。
火災の恐れ
地下に電線を埋めるだけが無電柱化ではありません。
大通りの電柱を無くし、一本裏通りの軒先に電線を伝わせてそこから大通りに面した家屋にも電線を渡らせるという方法もあります。
しかし、この方法で危惧されるのは電線を伝わせている家屋の火災です。
電線からの出火は少ないとはいえゼロではありません。
実際に海外ではこの方法での火災があるようです。
歩道が狭いと対象ではない?
無電柱化がすすめられているのは幹線道路などの広い道路からです。
全国的にすすめていくということですが、やはり優先順位は幹線道路からでしょう。
つまり広い歩道がある道路からということになりそうです。
できるなら、狭い歩道にある電柱こそ車いすやベビーカーの通行などに支障をきたすということを考えた計画にしていただきたいものです。
無電柱化には何年もかかるそうですから、2020年までに無電柱化が完了することはなさそうですが、東京オリンピックを機会に空を見上げると電線ばかりだった景色が変わってくるのではないでしょうか。
広い道路だけでなく、路地裏からも電線が無くなることを願っています。