女子マラソン元日本代表選手の原裕美子さんが、コンビニエンスストアで万引きした疑いで逮捕されましたが、その原因が摂食障害によるものだったそうです。
摂食障害を発症すると、精神障害による病的なものとしての窃盗、万引きをくり返してしまう人がいるのだとか。
病的な万引きなのでビデオカメラが設置されていても、店員が見ていてもおかまいなしに盗んでしまうのが特徴です。
摂食障害はほとんどがダイエットから始まりますので、過度なダイエットをしたいと思っている人は摂食障害に陥ってしまわないよう気を付けましょう。
摂食障害とは
食べることを自分の意志では止められなかったり、逆に食べることを拒否してしまう疾患で、たいていは拒食と過食を繰り返すと言われています。
嚥下障害などとは違って精神疾患の一種なので、中枢性摂食異常症とも呼ばれるようになってきました。
難治性疾患(難病)として厚生労働省から指定されています。
過食では、食べ過ぎてしまうことで糖尿病や高血圧症、糖尿病性ケトアシドーシスの原因となります。
拒食症では、食べなかったり吐いたりしてしまうのでエネルギーを摂取できず、低血糖や脱水症状から最悪の場合死に至ることもあるらしいです。
拒食
アスリートではない一般の女性が拒食症に陥る場合、痩せている体型を良しとする価値観が背景にあると言われています。
ダイエットをして「やせた!」という達成感と、自分をコントロールできたという万能感から自己を肯定し、また周囲からも肯定し称賛してもらえるということを期待するようです。
痩せても痩せても「自分は太っている。もっとやせなければ」と思い込んでいるのだそうです。
アスリートの場合は、食べてしまったら競技のレベルが落ちるのではないかとの不安から食べなくなることが多いです。
特にマラソンなどは体重が軽いほうが有利と考えられていますから、自分を追い込んでいく人ほど発症しやすいと考えられます。
拒食が続くとどうなるのでしょうか?
これは拒食と思っていなくても、過度なダイエットをしている人にも言えることです。
必要なエネルギーや栄養素が不足するため、低血糖から意識障害(昏睡など気を失う状態)となったり、脳が委縮してしまったりします。
また、食べてすぐ吐き戻したり下剤を乱用したりすると、低カリウム血症などの電解質代謝異常や脱水症状を起こして、高血圧、イライラ、不安、睡眠障害、便秘、乾燥肌、骨粗しょう症、月経不順や無月経などを引き起こします。
そして重度になると腕や足の筋肉が麻痺してきます。
手足ではなく呼吸筋が麻痺すると呼吸ができずに死に至ります。
心室細動という心臓がポンプの役目を果たさなくなる症状が出ることもあり、こちらも最悪の場合死に至ります。
過食
摂食障害とは拒食と過食を合わせたものをいいますが、実際に拒食だけの人はそう多くはないと思われます。
拒食が続いた結果、リバウンドとして食べてしまうのです。
そして食べてしまった罪悪感から自ら嘔吐を誘発したり、下剤を使ったりして排出するのです。
ムリヤリの排出で「食べてもチャラになった」という経験をしてしまうと、味を占めてしまうのか繰り返すようになると言われています。
テスト
インターネットで調べると、自分が摂食障害の可能性があるかどうかを調べるテストがありますし、女子アスリートへのテストなどもあり、スポーツ関係者の間でも懸念を抱いていることがわかります。
なぜ摂食障害になるのか
アスリートでない人の場合、痩せ願望、自尊心の欠如からくる自己不信の克服願望などがあるようです。
女子アスリートの場合、タイムを良くしたい、パフォーマンスを向上させたいという思いから、だんだん体重を落とさないとタイムが悪くなるのではないか、パフォーマンスが落ちるのではないか、という強迫観念になっていくようです。
心理面からみて摂食障害になると言われている説は6つあります。
一つ目は、幼児期の発達過程において安心安全・愛情や所属などの欲求が満たされなかった場合。
二つ目は「太っていると嫌われる」などという対人関係の問題。
三つ目は、女性という性を拒否するもの。思春期に女性らしい体型になることを拒むにはその人なりの理由があるのでしょう。
四つ目は、長時間の絶食によるダイエットハイ。脳内麻薬の作用で絶食を止められなくなるのかもしれません。
五つ目は、人間関係やトラウマなどによるストレスが関わってくるという説。
最後は遺伝説。
摂食障害になる要因として、こんなにも説があるということは決定的な原因というものがないか、原因となる幅が広すぎるということになります。
つまり、誰でも陥る可能性があるということですので、アスリートだけでなくダイエットに励む人も気を付けなければなりません。
マラソンだけの問題じゃない
日本代表でなくても陸上競技の女子長距離選手にとって、摂食障害は深刻な問題です。
体重を落とさなければタイムはよくなりませんが、体重を落としていくということは摂食障害と紙一重で、やじろべえのように揺れているようなものなのです。
ちょっとコントロールができなかっただけで容易に摂食障害へと転がり落ちてしまう危険性をはらんでいます。
高校生や大学生の長距離選手では月経不順や無月経になって当たり前と考えている人もいるようです。
女子マラソン競技だけでなく、新体操選手にとっても摂食障害はもはや職業病のようなものです。
陸上競技は自分の体が重いことで走るスピードが遅くなってしまいますが、新体操でもやはり体重が増えることでパフォーマンスが下がるのでしょう。
また、芸術点を獲得するには手足が長いと有利に働きますが、手足を細くすることで長いと錯覚する視覚効果を意識的にであれ無意識的にであれ狙ってしまっているのでしょう。
そのような点ではフィギュアスケートや新体操選手などもそれほど知られていなくても摂食障害と無縁ではないはずです。
治療方法
薬物での治療よりも心療内科や精神科でのカウンセリングでの治療が多いようです。
認知行動療法が使われることが多いですが、この療法では効かない人もいます。
その場合、対人関係療法を使っていくのが主流のようです。
ただし、摂食障害を専門とする医師やカウンセラーが少ないという問題もあるそうです。
体重を落としたい、その一心でダイエットを始める人は多いはずです。
ストイックに真面目に体重を落としていくと、気付いたときには摂食障害になっているかもしれません。
摂食障害の治療は非常に困難だと言われています。
そして摂食障害は死亡率が高い病気でもあります。
どうか、ダイエットをしたために最悪の事態になってしまったということがないようにほどほどを心掛けましょう。